暮らしの底から水面を見つめる

グッドになりたい日記

もっと知りたい? 私の想いを知りたい?

ラブライブ!のSSを書いていたんですが、完成させられそうにないので、供養という意味も込めてブログあげちゃいます。
真姫ちゃん視点、地の文が多いのでちょっと読みづらいかもしれませんが、よかったら読んでみてください。
キャラ崩壊はしてないつもりですが、にわかなのでそのときはご了承ください……。





「好きな人? いるよ~」
 私のぶっきらぼうで突飛な質問に、まるで産毛の小鳥を思わせる柔らかな雰囲気を持つ先輩はデザインを描き留めたノートから顔を上げ、笑顔でそう答えた。甘ったるいショートケーキのような声で返ってくる言葉。それは頭の隅でなんとなく、いや完全にわかりきっていた。
「穂乃果ちゃんと海未ちゃん♪」
 普通ならクラスメイトの男の子や、憧れの異性の先輩の名前が上がるのだろうけど、私たちの通うこの高校は女子校。聞いた話によると同性愛、というのとはまた違うのだと思うけど、女の子同士で付き合っているというのも普通にあるのだとか。
 付き合っているのかどうかはわからない。ただ穂乃果と海未の名前を言った彼女の表情を見ると本当に好きなんだと思うと同時に、そんなに想える人がいるというのに少しだけ嫉妬してしまう。
「そのどちらか片方しか選べないなら?」
 だから私は意地悪な質問をしてみた。彼女が少し困ったような顔をするとなんだか背中がゾクゾクとする。
「もちろん海未ちゃんのことも好きだし……あっ、μ'sのみんなのことも好きだよ。うーん、やっぱり穂乃果ちゃんになっちゃうかなあ……」
「じゃあ穂乃果が一番として二番が海未? その次は?」
 ますます彼女の顔が弱々しくなると同時に自分の中のいたずらな私が段々と表に出てきた。SとかMとかそういうのを考えたことはなかったけれど、私はSっ気があるのかもしれない。もしくは彼女の持つ雰囲気が嗜虐心をそそるのか。
「えっと、えっとぉ……」
「あー! 真姫ちゃんがことりちゃんをいじめてる!」
 教室の扉を開けるや否や、部屋中に響き渡るような声で叫んだμ'sのリーダーは私たちの間に入るや否や
「どんな理由があってもいじめはダメだよ!μ'sはみんななかよくたのしく、だよっ!」
 よくわからないスローガンじみた言葉に私もことりも我慢出来ずに吹き出してしまい、言った本人はそんな状況によくわからないといった不思議な表情をして首を傾げた。
「あれ?」
「ごめんなさい、ことり。ちょっと意地悪すぎたわ」
「ううん。ことりもすぐ答えられなくてごめんね」
「あれれ?」
「別にいじめられてたわけじゃないから大丈夫だよ、穂乃果ちゃん」
「ちょっと話してただけよ」
「何の話?」
 穂乃果が相変わらず頭に疑問符を浮かべた状態でそう言うので、その姿がどうにもおかしくて笑いそうになる。彼女から視線を外すと向かいに座った押し殺すように小さく笑ったことりと視線がぶつかり、我慢していた笑いが我慢出来ずにこぼれた。
「「秘密」」
「えぇーそりゃいじめだよぉ!」


「好きな人? アイドルは恋愛禁止。ファンを裏切る行為よ!」
 上級生であることをつい忘れてしまいそうな小柄な彼女は、鼻息荒く、したり顔で放つ言葉を今日もいつもと同じように口に出した。そういうのはいいからと私が言うと「なによ、そういうのって!」と一人で怒るのもいつもと同じ。動くたびに赤いリボンでまとめられた二つの髪が揺れる。
「しょうがないわねー。強いて言うならぁ…にこはぁ、にこが好きにこっ」
 にっこにっこにーという相変わらずわけのわからないポーズと決めゼリフを一人廊下でやっているのは恥ずかしくないのだろうか。教室でもこんな感じなのかしら。私が言うのもなんだけど浮いてそうね。
「あーハイハイそうね。ありがと、にこちゃん。参考になったわ」
「びっくりするほど心のこもってないありがとうね!そもそも真姫! あんたはアイドルとしての自覚が足りなすぎるのよ。大体ねぇ……」
 話が長くなりそうなので彼女を置いて教室に向かうことにした。人選を誤ったわ。
 しばらくすると後ろから「ってなに勝手に帰ってるのよっ!」という大きな声が聞こえたが、私は振り向かずに歩みを進めた。


「好きな人? 藪から棒にいきなりどしたん?」
「ちょっとね」
 一年生の教室に向かう途中、なんとなく校内を散策しようと歩いていたらタロットカードを持って窓辺に佇む不思議な雰囲気の前副会長はその質問内容に首を傾げた。そんなに変なことを聞いたわけではないのだけれど。
「真姫ちゃんからそんな質問が来るなんてなあ。ちょっと驚いた」
 女子高生らしい質問だと思っているのだけれど、私そんなにらしくないのかしら?
「うーん、いるといえばいるんやけど、その真姫ちゃんの言う好きってどの種類なんかわからんからどうも言えんなあ」
「愛とか好意とかなんでもいいわ。とりあえず胸を張って好きと言える人がいるかってだけ」
「ふーん」
「希はエリーかしら」
「どうやろ」
「その言い方、肯定しているようなものよ」
「ふふ。さて、どうでしょう」
 カードで口元を隠して怪しく笑う希は以前にこちゃんの家で見た戦隊ものの女幹部のように見えた。最上級生なだけあってμ'sの中でも一番大人びた感じがする。
「珍しい組み合わせですね」
 いくつかのプリントを持って歩いてきた彼女はまさに大和撫子という言葉がピッタリ当てはまる凛とした佇まいの生徒会現副会長。
「ちょっとお話してたんよ。用事はもう終わったん?」
「えぇ。お騒がせしました」
「何かあったの?」
「生徒会のことでちょっと」
「生徒会長様は部室で見たけど」
「自分の仕事が終わるや否や飛び出して行きましたよ」
「大変ね、海未も」
「慣れていますから」
 そう言って笑う海未の表情はいつもより柔らか。穂乃果のことになるといつも見ることができる顔。彼女もことりと同様、穂乃果への好意というものが顔や雰囲気に滲み出ている。それに海未はことりよりわかりやすい。
「聞いていいのかわかりませんが、お話とは?」
「あー海未は……聞かなくても大丈夫」
「そやね。聞かんでもわかることやし」
「どういうことですか?」
「好きな人はいるかって話」
「ええ、いますよ。穂乃果とことりです。付き合いが長いですからね」
 微笑む海未。希に視線をやるとほらねと言わんばかりに小さく笑った。
 彼女の持つ雰囲気。彼女の書く詞同様、真っ直ぐに自分を表現できるのはちょっと、いや、かなり羨ましい。弓道でもやってみようかしら?


「好きな人? なかなか難しい質問ね」
 そう言って真剣な面持ちで考え込む彼女の姿はそのまま額縁に入れて飾りたいほど様になっている。金髪、碧眼。メリハリのあるスタイルに透き通るような白い肌。大人っぽいと自負している私でも三年生二人には勝てる気がしない。
「この場ですぐ答えられないわ。一日もらっていい? 考える時間が欲しいの」
 そこまで深く考えるような質問だったのだろうか。
「エリーは真面目ね」
「? よくわからないけど、ありがとう?」
 なんとか廃校を阻止しようと動いていた生徒会長としての彼女はいつも背筋を伸ばしてどこか近寄りがたいお堅い雰囲気を持っていた。廃校問題と生徒会長という二つの重い荷物を降ろして軽くなった今のエリーは以前の反動か、もしくは箍が外れたのか、前述のイメージを覆すほどの変貌っぷり。カードのお告げとか言って加入してきた希よりもずっとインパクトがあった。その希によると一年生のときはそれよりもずっとキツイ性格だったみたいで、今話しかけている彼女が本来の姿なのだと思うと無性にかわいく感じてしまう。
「にこだと、アイドルは恋愛禁止にこっ! なんていいそうね」
「まさにその通り返ってきたわ」
「ふふっ、にこらしいわ」
「おーい、絵里ちゃーん! って真姫ちゃんもいた!」
「こら、穂乃果。廊下は走らないの。生徒の代表である生徒会長がまず守らないといけないでしょ」
「うへへ、面目ない」
 今度は新旧生徒会長が揃った。まぁμ'sの活動をしている以上そうなるのは当然なのだけれど。
「お話してたの? 穂乃果お邪魔かな?」
「大丈夫よ。もう終わったから」
「そういう穂乃果は何の用事?」
「特に用事はないよ。絵里ちゃんたちの姿が見えたから声かけただけー」
 実に彼女らしい。あぁ、そういえば穂乃果には聞いていなかった。
「穂乃果は好きな人、いる?」
 私がそう聞くやいなや、廊下どころか校内に響くんじゃないかというくらい大きな声で「いるよ!」と言って、
「μ'sのみんなかな! あと雪穂に亜里沙ちゃんに……お母さん、お父さん。あとこころちゃんでしょ、ここあちゃんに虎太郎くんに……」
「ふふ。穂乃果はワガママね」
「えへへ〜それほどでもないよぉ」
 いや、それ褒めてないから、とツッコむ気にもなれず、エリーに頭を撫でられてまるで猫のように目を細める穂乃果を見て、聞く人を間違えたと思った。


「好きな人? そんなのもちろん決まってるにゃ!」
 まるで猫のように人懐っこく落ち着きのないクラスメイトはいつものように無駄に有り余った元気を言葉に込めてきた。彼女からの返答もわかりきっている。
「どうせ花陽でしょ」
「違うよ」
 驚いて思わず椅子から落ちそうになった。彼女、星空凛といえば一に花陽、二にラーメンといったところなのに。一体彼女の心を射止めたのはどこの誰なのか。
「なにもそんなに驚かなくても」
 ことりかしら? 花陽とも雰囲気も似てるし妹気質の凛に対してことりはおっとりした姉のようで相性は悪くないと思う。穂乃果は妹がいるけど姉っぽくはない。にしても騒がしくて人を巻き込む似たもの同士合わないわけがない。にこちゃんはああ見えてこころちゃんたちのしっかりしたお姉さんで面倒見もいいことからことりと同じように姉妹ぽくなる。
「おーい、真姫ちゃん?」
「……なによ。今考え事してるんだから」
「真姫ちゃんから話しかけて置いてそれはちょっとひどいにゃ」
 海未とは同じ体育会系と言ってもベクトルが違うだろうし、どうしても師匠と出来の悪い弟子みたいな感じになるから違う。すぐに泣き言を言う凛に、ダメです! という海未の姿が容易に浮かぶ。エリーと希はあまり想像が出来ない。包容力のある希に至っては下手すれば親子のように見えてもおかしくないのでは。
「あれ? 真姫ちゃん先に部室に行ったんじゃなかったの?」
「かよちん、なんだか今日の真姫ちゃんおかしいにゃ」
 ああ、そう言えばエリーも長女だったわね。厳しい姉になりそう。いつも怒られていそうね。花陽は良くも悪くも凛のイエスマンみたいなところがあるし、エリーみたいな正反対のタイプも案外ありなのかも。
「どうしたの? お腹でも痛い?」
「花陽。あなた好きな人っている?」
「えぇ! いきなりどうしちゃったのぉ!?」
「いいから、ほら答えて」
「え、えぇ~……」
「凛も聞きたいな」
 普通なら花陽は凛を出すだろう。二人は幼馴染でその絆も外野が考えているよりずっと固い。だからこそ凛が否定したのは驚いたしある意味ショックだった。私の知らないところでなにが起きていてもそれは当人たちの自由だ。ただ私の中で変わらないと思っていたものが穂乃果のような突拍子のない私のくだらない質問で崩れたのはどうも許容出来ない。ただのワガママであることはわかっているけどはっきりさせておきたい。
「真姫ちゃん顔がすごい怖いよ」
「ちょっと凛は黙ってて」
「やっぱり今日の真姫ちゃんひどいにゃ」
 とりあえず凛のことは後回しで、答えの出ていない花陽が先だ。
「は、花陽は、凛ちゃんが好き、かな」
 花陽のその言葉に勝手に張っていた肩の力が糸が切れたように抜けた。私が望んでいた答えがそのまま返ってきた。
「それと、真姫ちゃん」
「あ、凛と同んなじ!凛もかよちんと真姫ちゃんが好き!」
「わ、私ぃ!?」
 思わず声が裏返るほど、この答えは予想が出来ていなかった。
「それと穂乃果ちゃんに絵里ちゃんに……」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。そう言うのじゃなくて!」
「そう言うのって?」
「えぇっと……そ、そうよ! 順位をちゃんとつけて。一位、二位って」
 なにをそんなに焦ってるんだ。私は。
「うーん、ちょっと難しいけどあえてつけるなら」
「つけるなら……?」
「一位は……やっぱり凛ちゃんと真姫ちゃんかな。同率一位っていうのじゃダメかな?」
「凛もかよちんと一緒だよ。かよちんのことは幼稚園のときから大好きでこれからもずうっと大好きだし、真姫ちゃんのことも大好きだにゃ!」
 私が凛と花陽と同じ順位。幼い頃から親友の二人に、まだ会って一年も経っていない私がそこに入っていいのだろうか。聞いたのが私だから、同情票? 二人は優しい。それは一緒にいる私がよく知っている。
「凛ちゃんも真姫ちゃんも私にとってかけがえのない大切な人で、優劣なんてつけられないよ」
「かよちんはかよちんで好きだし、真姫ちゃんは真姫ちゃんで好きだよ」
「二人がいたからスクールアイドルの、今の私がいる。あのとき二人が背中を押してくれなかったら花陽はここにいなかったと思う。恩人って言っちゃうと変な感じかもだけど、それだけ二人の存在は私の中でとても大きいの。それが答えじゃ、ダメかな?」
 顔が熱い。目の前に鏡があったらそこには熟したトマトのような顔色をした私が写るだろう。見えなくてよかった。
「し、仕方ないわね。それでいいことにしてあげるわ。そ、それと……あ、ありがとう……」
「えへへ、こちらこそありがとう」
「照れて顔がトマトみたいになってるにゃ」
「て、照れてないっ! もう知らないっ!」
「真姫ちゃんは照れるとすぐムキになるからわかりやすいにゃ」
「照れてないって言ってるでしょー!」


「凛はそんな真姫ちゃんも大好きだよ!」

「これからもよろしくね。真姫ちゃん」

「と、当然でしょ。この真姫ちゃんが一緒にいてあげるんだから。感謝しなさい」

 私の好きな人? そんなのもちろんこの二人に決まっているでしょ。今までも、これからも。よろしくね。



おわり




やっぱまきりんぱなは最高やな!
矢澤?知らない子ですね…